Ra0.8という面粗さは、機械加工において比較的高精度な仕上げが要求されるレベルです。
この数値は、摺動部品やシール面、圧力接触部など、微細な表面形状が性能や耐久性に直接影響を及ぼす場面で頻繁に指定されます。
本資料では、Ra0.8を満たすための具体的な加工手段とその注意点について、ドリル・リーマ加工を中心に解説します
Ra0.8の適用事例
– 油圧機器の摺動穴部
– 金型のガイドピン挿入穴
– 精密治具の基準穴
– 流体シールを必要とする配管部品
これらの用途では、Ra1.6では性能が不足する可能性があり、Ra0.8の安定加工が求められます。
Ra0.8を実現する加工方法と注意点
- 高精度リーマ加工
高精度リーマ(超硬・PVDコート)を使用し、リーマ加工によってRa0.8に到達可能。
送り速度・切削液の管理が重要。 - 内面仕上げホーニング
大量生産や長穴への対応にはホーニングが有効。
ただしコスト・工数が増加するため、リーマとの比較検討が必要。 - 内部給油式超硬ドリル+リーマ
穴あけ時のバリ・焼き付き抑制により、仕上げ精度が向上。
ドリルの精度がその後の仕上げにも大きく影響する。 - ローラーバニシング加工
切削ではなく塑性変形により表面を平滑化する加工法で、Ra0.8以下も実現可能。
導入コストや適用条件(材料の延性など)を要検討。 - ダイヤモンドリーマ加工
高硬度なアルミ合金や焼結材などにおいて、Ra0.8以下の面粗さを安定して実現可能。
ダイヤモンド電着タイプやCBN下地仕様により、工具剛性と切削安定性に優れ、長寿命化にも寄与する。
ただし、母材との相性(軟質材では目詰まりの懸念)や再研磨不可の点は導入前に確認が必要。
リーマの仕様に関する補足
– 刃数が多いほど切削抵抗が分散し、仕上げ面が安定する。
– ネジレ角が小さいリーマは直進性が高く、円筒度や面粗さに優れる傾向がある。
– 切れ刃のホーニング処理の有無や、背逃げ角の最適設計もRa0.8達成に影響する。
Ra0.8対応の加工上のポイント
– 工具摩耗の管理(リーマの寿命によるRa変動)
– 穴径公差とのバランス(H7程度が多い)
– 切削油の選定(ミストではなくエマルジョン推奨)
– 機械剛性とチャッキングの安定性
まとめ
Ra0.8は、通常のドリル加工だけでは達成が難しく、仕上げ工程の工夫と条件管理が必要不可欠です。
特殊切削工具の選定と工程設計の最適化により、安定した品質と高い加工効率の両立が実現可能です。
設計と加工現場が一体となって、性能を満たす加工手法の構築が求められます。