加工現場において「Ra1.6の面粗度を安定して出したい」というご相談を多くいただきます。
私たちは、超硬リーマおよびバニシングドリル・リーマの製造を専門とする切削工具メーカーとして、これまで多くの高精度加工に携わってきました。
本稿では、面粗度Ra1.6の基礎から、加工手法の選択肢、そして工具の適用例までを紹介いたします。
Ra1.6とは? ─ 中仕上げ品質の基準
Ra(算術平均粗さ)1.6μmは、一般的に「中仕上げ」とされるレベルの表面粗さです。
自動車部品・産業機器などにおけるはめ合い穴、ピストン穴、ベアリング穴などに広く指定されており、安定した寸法精度と滑らかな仕上げが要求されます。
ドリルによる穴あけのみではこのレベルの面粗度を得ることは困難であり、仕上げ専用工具による最終加工工程が必要になります。
超硬リーマによるRa1.6の実現
超硬リーマは、その高剛性・耐摩耗性により、精密仕上げに最適な工具の一つです。
・多刃構造によってびびりを抑え、切削抵抗が分散されることで、内面に均一で滑らかな加工面が得られる
・適切な下穴加工との組み合わせにより、Ra1.6はもちろん、Ra0.8レベルの高精度仕上げも可能
・アルミ、鋳鉄、炭素鋼、ステンレスなど、被削材に応じた専用設計モデルを展開
加工条件・使用機械に応じたカスタム対応も承っており、量産現場における安定加工実績も多数あります。
バニシングドリル・リーマの特長と活用法
「穴あけ+仕上げ」を1本でこなしたい――そんなご要望にお応えするのがバニシングドリル・リーマです。
・先端部で穴あけを行い、後方のバニシング部で擦り加工を加え、面粗度を向上させる
・加工時間の短縮や工程集約によるコスト削減が可能
・Ra1.6相当の滑らかな内面を、一工程で安定して再現可能
「短納期化」「自動化ラインでの使用」「再現性重視」などの条件においても、すでに多くの現場で成果を上げています。
材質別の対応例
【アルミ材】
アルミは加工性に優れる反面、切りくずの巻き込みや焼き付きによる面粗度の乱れが起こりやすい素材です。
以下のような対策を施した工具設計を採用しています
・鏡面仕上げ仕様の超硬リーマ
・アルミ専用コーティングによる溶着防止
・切屑排出性に優れたフルート形状
これにより、Ra1.6以下の安定した仕上げ面を実現可能としています。
【鋳鉄材】
鋳鉄は脆性破壊を伴いやすく、加工中に面粗度が荒れやすい特徴があります。
そのため、以下のような設計と加工条件の工夫が必要です
・鋳鉄専用超硬材質+溶着軽減に適した逃げ角の最適化
・切削条件の最適化支援(送り速度・クーラントなど)
・振れ抑制設計による安定したびびり対策
現場で得られたフィードバックをもとに、鋳鉄対応リーマの継続的な設計改善を行っています。
まとめ:面粗度Ra1.6を、安定的かつ効率的に
Ra1.6という面粗度は、加工条件の最適化と工具選定により、十分に再現可能な品質です。
特に、超硬リーマやバニシングドリル・リーマは、寸法精度と面粗度の両立において非常に高いパフォーマンスを発揮します。
長年の工具製造経験を活かし、現場に即した提案・工具設計を通じて、お客様の品質要求に対応しております。
面粗度の安定化・工程の簡略化などでお困りの際は、お気軽にご相談ください。
技術的なご相談も承っております
加工面粗度や工具選定に関するお悩みは、素材や使用機械、加工条件によってケースバイケースで異なります。
図面や現場条件に基づいた最適な工具設計・加工提案を行っております。
「面粗度が安定しない」「嵌合部の仕上げにムラがある」「工具選定に迷っている」といった課題がございましたら、
下記フォームよりお気軽にご相談ください。
※図面の添付や具体的な材質・加工条件の記載があると、より的確なご提案が可能です。