ドリル・リーマ・エンドミル|工程削減の考え方と選び方
工程集約(工程削減・工具交換削減)を「成立させたい」なら、基本は超硬が有利です。理由は、工程をまとめるほど工具にかかる負担(熱・摩耗・負荷)が増えるから。一方で、低速・条件が揺れる環境ではハイスが安定する場面もあります。
この記事では、工程集約目線で「超硬とハイスの違い」を整理し、材料別・工具別に、どちらが向くかを“現場の言葉”でまとめます。
工程集約とは?
工程集約は難しい話ではなく、次の2つを減らすことです。
- 工程数を減らす(例:穴あけ→面取り→座ぐり を1工程に)
- 工具交換を減らす(例:ドリル+面取り一体、リーマ+入口仕上げ一体 など)
狙いは「工具単価を下げる」ではなく、段取り・交換・停止・不良・工具管理工数をまとめて減らし、総合コストを下げることです。
工程集約で差が出る!超硬とハイスの本質的な違い
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観点 |
超硬(超硬合金) |
ハイス(高速度鋼) |
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熱への強さ(連続加工) |
強い。高回転・高送りでも性能が落ちにくい。 |
速度を上げるほど熱で厳しくなりやすい。 |
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摩耗への強さ(仕事量増) |
強い。工程をまとめても摩耗で崩れにくい。 |
摩耗が進むと抵抗が増え、品質が崩れやすい。 |
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剛性(複合形状の安定) |
剛性面で有利。複合加工でも安定しやすい。 |
条件の揺れを吸収しやすい面はあるが、負荷増で頭打ちになりやすい。 |
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壊れ方 |
条件が悪いと突然欠けることがある(振れ・断続・鋳肌の影響を受けやすい) |
突然欠けるより、刃先が丸くなって切れ味が落ちることが多い(徐々に悪化しやすい) |
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工程集約の適性 |
◎:工程集約の“成立率”が上がりやすい。 |
△:低速・低負荷なら可。工程をまとめるほど不利になりやすい。 |
ポイント:工程集約は「1本でまとめて削る」ので、刃先の熱・摩耗・負荷が増えます。だからこそ、熱・摩耗・負荷に強い超硬の方が、工程集約の成果が出やすく、条件出しも短期間でまとまりやすい傾向があります。
材料別:工程集約はどっちが向く?
材料で“勝ち筋”が変わります。特に鋳鉄は鋳肌や硬さムラの影響が出やすく、工程集約の難易度が上がります。
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材料 |
工程集約の狙い |
推奨 |
注意点 |
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鋳鉄(FC/FCD) |
穴あけ+面取り、仕上げ+入口仕上げ、座面一体など |
超硬:◎ / ハイス:△(条件限定) |
鋳肌・砂かみ・硬さムラで当たりが乱れやすい。切粉詰まり・振れは致命傷。 |
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鋳肌あり |
入口品質の一体化、バリ低減など |
超硬:◯〜◎(刃先強化) / ハイス:△ |
鋳肌が工程集約の最大の敵。入口当たりを安定させる設計・保持が重要。 |
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一般鋼 |
穴あけ+面取り、面取り工程削減など |
ハイス:◯〜◎(低速・汎用) / 超硬:◯〜◎(高能率・集約) |
ハイスはドリル・タップ・リーマで定番。高能率化や複合化は超硬が有利。 |
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ステンレス(SUS) |
工程削減・工具交換削減 |
超硬:◎ / ハイス:△(コバルト系で条件限定) |
熱・溶着で条件が崩れやすい。切粉処理と潤滑が鍵。 |
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アルミ |
穴あけ+面取り、加工時間短縮 |
超硬:◎(刃形次第) / ハイス:◯(低速・汎用) |
溶着・切粉噛みが課題。刃形と排出が重要。 |
工具別:工程集約のやり方と、超硬/ハイスの向き不向き
1)ドリル:工程集約の主役は「穴あけ+面取り(+座ぐり)」
狙い:面取り工程・工具交換・段取りを減らす。
【超硬】超硬が有利:
- 連続加工で熱が上がっても崩れにくい
- 穴品質(入口のカエリ、面取りの安定)を揃えやすい
- 工程集約で仕事量が増えても摩耗で崩れにくい
【ハイス】ハイスが向く場面(限定):
- 低速・低負荷で「まず止めない」優先
- 設備剛性が弱く、超硬が欠けやすい条件が避けられない
- ※ただし、工程をまとめるほど熱・摩耗で頭打ちになりやすい
2)リーマ:工程集約は「仕上げ+入口仕上げ(面取り)」で成立しやすい
狙い:仕上げ後の追加工程(面取り・バリ処理)を減らす。
【超硬】摩耗で穴径が逃げにくく、入口品質が安定しやすい。工程集約の成立率が上がりやすい。
【ハイス】少量・立上げで条件の揺れが大きい場合に安全側。鋳肌混在で欠けが出る条件では選択肢。
3)エンドミル:工程集約は「溝+面取り同時」か「荒→仕上げ短縮」
狙い:工程数を減らし、段取りや工具交換を減らす。
【超硬】摩耗→抵抗増→びびり→面が乱れる、の悪循環を止めやすい。複合加工でも剛性で安定しやすい。
【ハイス】低速で欠けを避けたい断続条件、手動機や保持が不安な場面で有用。
事例:工程集約で“成果”が見えやすい改善例
事例1:穴あけ+面取り一体で、段取りと工具交換が減った
課題:面取り工程が別で、工具交換と段取りが多い。
比較:分工程(工具が変わる)→当たり条件が変わりやすい/集約(同一工具で入口まで)→再現性が上がりやすい。
結果:工程数が減り、段取り負担・停止のムダが減少。
事例2:仕上げ+入口仕上げを集約して、入口品質のばらつきが減った
課題:仕上げ後の面取りで当たりが変わり、入口品質が安定しない。
対応:リーマ工程に入口仕上げを集約(工具と条件を最適化)。
結果:工程削減に加えて、入口品質が揃いやすくなった。
失敗しない工程集約チェック(現場用)
工程集約の成否は、次の4つでほぼ決まります。
- 何を減らすか明確か(面取り?座ぐり?バリ?)
- 振れ・保持は安定か(欠けの最大要因)
- 切粉が詰まらないか(抵抗増で一気に崩れる)
- 摩耗した時の品質変化を想定しているか(交換基準の設計)
最後に
工程集約は工具負担が増えるため、熱・摩耗・剛性で優位な超硬が“成立させやすい”のが基本です。ハイスは低速・条件が揺れる環境で有用ですが、工程をまとめて総合コストを下げる軸は超硬になりやすい。
ソリッドツールでは、超硬特殊切削工具メーカーとして、ワーク形状・狙い(穴あけ+面取り/仕上げ+入口仕上げ等)・設備条件を伺い、工程削減につながる超硬工具設計と工程提案を行っています。「工程を1つ減らしたい」「工具交換を減らしたい」からでOKです。お気軽にご相談ください。
