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Home > コラム > 超硬ドリルとは? 種類、メリット・デメリット、ワーク別の選び方

超硬ドリルとは? 種類、メリット・デメリット、ワーク別の選び方

「超硬ドリル」という言葉は耳にするが、ハイスドリルと何が違うのか、どんな時に使うべきなのか、正直よくわからない、という方も多いはずです。
このコラムでは、超硬ドリルの基本から種類・メリット・デメリット・ワーク別の選び方・現場での活用例まで、まとめて解説します。

 

超硬ドリルとは

超硬ドリルとは、刃先に超硬合金(タングステンカーバイド+コバルト)を使用したドリルのことです。
超硬合金は硬度HRA88〜93程度で、ハイスの約3倍の硬さを持ちます。さらに高温でも硬さを維持する耐熱性が特長で、「速く削れる」「長持ちする」という現場でのメリットに直結しています。

材料コストはハイスより高くなりますが、工具寿命・加工速度・精度の面で大きく上回るため、量産加工や難削材加工では広く採用されています。

超硬ドリルの3つの特長

内容

現場でのメリット

高硬度

HRA88〜93(ハイスの約3倍)

硬い材料でも安定して削れる

高耐熱性

高温でも硬さを維持

高速回転でも切れ味が落ちない

高剛性

たわみにくく安定した切削

穴位置精度・面粗度が安定する

ハイスドリルとの違い

切削工具の材質として長く使われてきたのがハイス(高速度鋼)です。超硬ドリルとハイスドリルを比較すると以下のようになります。

比較項目

ハイスドリル

超硬ドリル

材質

高速度鋼(HSS)

超硬合金(WC+Co)

硬度

HRC 63〜67

HRA 88〜93

耐熱性

△ 高温で硬さが低下

◎ 高温でも硬さを維持

切削速度

基準

2〜5倍※

工具寿命

基準

3〜10倍※

穴位置精度

○

◎ 剛性が高くたわみにくい

靭性(粘り)

◎ 折れにくい

△ 硬い分、衝撃に注意

工具単価

○ 安価

△ 高め

トータルコスト

△ 交換頻度が多い

◎ 寿命が長くコストが逆転するケースが多い

再研磨

○ 比較的容易

○ 専用設備が必要

※ 切削速度・工具寿命の倍率は加工材料・切削条件・コーティングの有無により異なります。あくまで目安としてご参照ください。

靭性(折れにくさ)はハイスが優れていますが、切削速度・工具寿命・穴精度の面では超硬が大きく上回ります。特に量産加工・難削材・高精度要求の現場では、超硬ドリルへの切り替えがトータルコストの改善につながります。

超硬ドリルのメリット・デメリット

メリット

メリット

内容

切削速度が上がる

汎用ドリル比2〜5倍※の切削速度で加工でき、タクトタイムの短縮につながります。

工具寿命が長い

耐熱性が高いため刃先の摩耗が少なく、工具交換頻度を大幅に削減できます。

穴精度が安定する

高い剛性でたわみにくく、穴位置精度・真円度・面粗度が安定します。

難削材に強い

SUS・チタン・焼入れ鋼など、ハイスでは対応しにくい材料でも加工できます。

再研磨して繰り返し使える

専用設備で再研磨することで、1本の工具を長期にわたって使用できます。

デメリット

デメリット

内容

対策

工具単価が高い

ハイスより工具1本あたりのコストが高くなります。

工具寿命・加工速度・再研磨コストを含めたトータルコストで比較することが重要です。

靭性(粘り)が低い

硬い分、衝撃や振動に対してやや折れやすい特性があります。

ホルダーの振れ精度管理・適切な切削条件の設定で対応できます。

低速・断続切削に不向き

衝撃の大きい断続切削や低速加工ではハイスが有利な場合があります。

用途に応じてハイスと使い分けることが重要です。

専用の再研磨設備が必要

ハイスと異なり、一般的な研削盤では再研磨できません。

専門メーカーへの再研磨依頼で対応できます。

※ 切削速度の倍率は加工材料・切削条件により異なります。

ドリルの種類

超硬ドリルにはいくつかの種類があります。刃部の構造・コーティングの有無・用途によって選ぶべきタイプが変わります。

① オール超硬ドリル(ソリッドドリル)

シャンクから刃先まですべてが超硬合金でできたドリルです。最も剛性が高く、高速・高精度な加工に適しています。
汎用的な穴あけから難削材まで幅広く使用され、コーティングを施すことでさらに工具寿命・面粗度を向上させることができます。

② 先ムクドリル

シャンク部はハイスや鋼、刃先部分のみ超硬合金を使用したドリルです。
オール超硬に比べてコストを抑えられる一方、刃先の超硬部分の性能はオール超硬と同等です。比較的大径(φ13mm以上)の穴あけに使われるケースが多いです。

③ ロウ付け超硬ドリル(板チップ)

超硬合金のチップ(刃)をシャンクにロウ付けで固着したドリルです。板状の超硬チップを使用するタイプを「板チップ」とも呼びます。
大径・特殊形状の加工に適しており、チップのみ交換して再利用できる場合もあります。特注形状にも対応しやすく、汎用機での使用にも向いています。

④ オイル穴付きドリル

ドリルのオイル穴仕様ドリル内部に切削油を供給するための穴(オイルホール)が設けられたドリルです。
深穴加工(L/D>5)での切り屑排出・冷却に効果的で、SUSや深穴加工で工具が折れやすい場合の改善策として有効です。

⑤ コーティング付きドリル

3枚刃ドリル超硬ドリルの表面にTiAlN・AlCrN・TiSiNなどのコーティングを施したドリルです。
コーティングにより刃先の耐熱性・耐摩耗性がさらに向上し、工具寿命の延長や高速切削が可能になります。加工材料に応じたコーティングを選ぶことが重要です。

ワーク別 超硬ドリルの選び方

加工する材料(ワーク)によって、最適な超硬ドリルの種類・コーティング・切削条件が変わります。代表的な材料別のポイントを解説します。

ワーク

特性

推奨ドリル

ポイント

鋼(一般鋼・合金鋼)

加工しやすいが高速切削で発熱しやすい

TiAlNコーティング付き オール超硬ドリル

切削速度を上げたい場合はTiAlNコーティングが有効。高硬度鋼はTiSiN。

SUS(ステンレス)

粘性が高く切り屑が長くなりやすい 切削熱が工具に集中しやすい

オイル穴付き超硬ドリル またはAlCrNコーティング

切削速度を上げすぎない。オイル穴で切り屑を確実に排出することが重要。

アルミ

粘性が高く刃先に溶着(構成刃先)が起きやすい

水素フリーDLCコーティング付き 超硬ドリル

溶着防止のため、摩擦係数の低いDLCコーティングが有効。切削速度は高めに設定。

鋳鉄

硬くて脆い。切り屑が粉状になりやすい

汎用オール超硬ドリル (乾式加工も可)

切削油なしの乾式加工も可能。切り屑が粉状のため詰まりにくい。

チタン

熱伝導率が低く切削熱が工具に集中 反応性が高い

TiAlNまたはAlCrN コーティング付き超硬ドリル

低速・高送りが基本。切削油を十分に供給し、工具への熱集中を防ぐ。

※ 推奨ドリル・切削条件は機械剛性・加工形状・要求精度により異なります。詳細はお問い合わせください。

超硬ドリルの活用事例

事例① 工程集約ができる段付きドリル

段付きドリルとは、1本のドリルで「下穴あけ」「面取り」「座ぐり」などの複数の加工を同時に行える複合工具です。
通常これらの加工はそれぞれ別の工具で行うため、工具交換・段取り替えが発生します。段付きドリルを使えばその回数を大幅に削減でき、加工リードタイムの短縮と段取りコストの削減が同時に実現できます。

Before

After

【導入前】下穴・面取り・座ぐりをそれぞれ別の工具で加工。3回の段取り替えが発生し、機械の停止時間が長かった。

【導入後】段付きドリル1本で3工程を集約。段取り回数が1/3になり、加工リードタイムが大幅に短縮された。

ソリッドツールでは、お客様の加工内容に合わせた特注段付きドリルの製作にも対応しています。

事例② 鋼加工用の高硬度コーティング

コーティング加工付ドリル鋼の加工では、切削熱による刃先の摩耗が工具寿命を大きく左右します。コーティングを施すことで工具寿命・加工速度をさらに向上させることができます。
鋼加工に適した代表的なコーティングがTiAlN(チタンアルミナイトライド)です。硬度HV3000〜3500※、耐熱温度800℃以上の特性を持ち、高速切削時の刃先摩耗を大幅に抑制します。

コーティング

硬度(目安)

耐熱温度(目安)

適した用途

TiAlN

HV3000〜3500※

約800℃※

鋼・合金鋼の高速切削

AlCrN

HV3000〜3300※

約1100℃※

高温環境・乾式加工・高合金鋼

TiSiN

HV4000以上※

約1100℃※

超高速切削・焼入れ鋼

TiN

HV2300〜2500※

約600℃※

一般鋼・汎用加工

※ 硬度・耐熱温度はコーティングメーカー・膜厚・成膜条件により異なります。あくまで目安としてご参照ください。

Before

After

【ノンコート超硬ドリル使用時】高速切削で刃先が摩耗しやすく、工具交換頻度が高い。切削速度を上げると寿命が極端に短くなる。

【TiAlNコーティング採用後】切削熱が刃先に伝わりにくくなり、工具寿命が大幅に延びた。切削速度を上げても安定した加工が維持できるようになった。

ソリッドツールの超硬ドリルが選ばれる理由

総合カタログ超硬切削工具の専門メーカーとして、標準品では対応できない「現場の困った」に特注・別作で応えてきました。

特注・別作
図面ベースで製作いたします。径・長さ・形状を問わず、1本からご対応できる体制を整えています。

工具精度
穴精度は工具精度で決まります。精度の悪い工具を使えば、どんな機械でも穴はズレます。自社で研削・検査を行い、ミクロン単位の精度を担保しています。

再研磨対応
超硬工具は再研磨できます。適切なタイミングで研磨することで、1本の工具を長くコストを抑えてお使いいただけます。

まとめ

超硬ドリルは、硬度・耐熱性・剛性の面でハイスドリルを大きく上回る切削工具です。デメリットとして工具単価の高さ・靭性の低さがありますが、トータルコストや加工精度で見ると多くの現場で優位性があります。
加工材料・穴深さ・要求精度に応じて最適な種類とコーティングを選ぶことが重要です。選び方がわからない場合や特殊仕様が必要な場合は、お気軽にご相談ください。

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