そもそも「油圧」とは?
油圧のしくみは、注射器を押すのと同じです。注射器のピストンを押すと、中の水が細い針から勢いよく飛び出します。これは、閉じ込めた水に圧力をかけると、その力がそのまま伝わって外へ出ようとするためです。
油圧機器もこれと同じ原理で、狭い場所に閉じ込めた油に圧力をかけることで、ショベルカーのアームを持ち上げるような大きな力を生み出しています。
油圧機器は「ミクロン単位のすき間」で動いている
油圧機器の内部では、部品同士のすき間がミクロン単位で管理されています。すき間が広すぎるとオイルが漏れ、狭すぎると焼き付きが起きます。だからこそ、汎用工具ではなく専用設計の超硬工具が必要になります。
例えば、油圧バルブ用スプールでは、外径公差を0.002mm(2μm)程度まで管理する例もあります。
油圧バルブボディやシリンダーには、鋳物材がよく使われます。代表的なのが、ねずみ鋳鉄(FC200・FC250)と球状黒鉛鋳鉄(FCD400・FCD450・FCD700)です。同じ「鋳物」でも黒鉛の形状や硬さが違うため、工具の摩耗の仕方も変わってきます。
今回は、油圧機器部品の加工現場でよく起きる4つのトラブルと、その解決策をご紹介します。
油圧回路全体の仕組み:ポンプ → バルブ → シリンダー
油圧機器は、油タンク・ポンプ・バルブ・シリンダーという4つの要素がつながって動いています。
まず油タンクに貯めた作動油を、ポンプが吸い上げて圧力をかけます。圧力のかかった油は、方向切換バルブによって流れ先を切り替えられ、シリンダーへ送られます。シリンダーは油の圧力を受けてピストンを押し出し、力を生み出します。役目を終えた油は、バルブを通って再びタンクへ戻ります。
この「油タンク→ポンプ→バルブ→シリンダー→油タンク」という一連の流れを油圧回路と呼びます。バルブボディの穴やシリンダーの内面は、この回路の中で油が漏れずに、かつスムーズに流れるための重要な接点であり、だからこそミクロン単位の精度が求められるのです。
トラブル1:穴の入り口・出口に出るバリ・むしれ
油圧バルブボディの穴加工では、穴の入口や出口にバリやむしれが出やすいという問題があります。バリが残ったまま組み付けると、シール性能が落ち、オイル漏れにつながります。
この問題には、右刃左ネジレのテーパー付きリーマが効果的です。切りくずを穴の入口側(工具の後方)へ排出する構造のため、仕上げ済みの壁面に切りくずが触れにくくなります。
つまり、切りくずの流れる向きを変えるだけで、バリ・むしれを抑えられるのです。
トラブル2:びびり振動で送り速度を上げられない
穴加工だけでなく、外形や溝の加工でも「びびり」が課題になります。刃が等間隔で被削材に当たると振動が重なり、共振(びびり)が起きやすくなります。びびりを避けるため、送り速度を落とさざるを得ません。
そこで使われるのが、不等分割・不等リードのエンドミルです。刃の間隔をあえて不均等にすることで、振動のタイミングをずらし、共振を防ぎます。
つまり、刃の並べ方を変えるだけで、送り速度を上げられる余地が生まれるのです。
トラブル3:複数工程に分けると溝幅がばらつく
油圧機器部品には、ヌスミ形状(逃げ溝)がよく使われます。これを複数の工具・複数の工程で加工すると、工程間の位置ずれが積み重なり、溝幅がばらついてしまいます。
そこで、対象形状に合わせて専用設計したTスロットカッターを使います。1本の工具で溝形状を一体加工するため、位置ずれが起きません。
つまり、工具を1本に集約するだけで、精度が安定し、工程も短縮できるのです。
トラブル4:アルミ加工で刃先に切りくずがこびりつく
油圧機器部品にはアルミ材もよく使われます。アルミ加工では、切りくずが刃先にくっつく「構成刃先」が起きやすく、仕上げ面に傷が入ったり、刃先の摩耗が早まったりします。
そこで使われるのが、DLCコーティングです。アルミとの親和性が低いため、切りくずが刃先に付着しにくくなります。
つまり、刃先の表面を変えるだけで、工具寿命を伸ばせるのです。ロウ付け構造の工具なら、摩耗した刃先部だけを交換・再研磨できるので、コストも抑えられます。
まとめ
今回ご紹介した4つのトラブルは、どれも「なぜ起きるのか」という原因さえ分かれば、工具の形状やコーティングを変えることで解決できます。
汎用工具では対応しきれない加工でお困りの際は、お気軽にソリッドツールまでご相談ください。









