〜コストと性能を両立する精密接合技術〜
金属加工現場で幅広く活用される「ロウ付け超硬工具」。高硬度・高耐摩耗性を誇る超硬チップを、工具本体にロウ付けすることで、性能とコストパフォーマンスを両立した実用的な切削工具を実現しています。
ロウ付け超硬工具とは?
ロウ付け超硬工具は、超硬合金(タングステンカーバイド)製の刃先部を、比較的粘りのある鋼製のシャンクやホルダーにロウ付けすることで製造される工具です。刃先の超硬性能とシャンクの耐衝撃性・コスト低減効果を兼ね備えています。
ロウ付け超硬工具のメリット
- コスト最適化
工具全体を超硬にする必要がなく、必要最小限の超硬使用で済むため、材料コストを大幅に削減可能。
- 性能バランス
刃先は高硬度・高耐摩耗性、シャンクは靭性・柔軟性を持たせることで、全体の耐久性・信頼性を向上。
- 設計自由度
大径工具、複雑形状刃先、段付きドリルなど、幅広い形状に対応可能。
- 高精度な刃先位置決め
ロウ付け工程により、刃先の位置・角度精度を高いレベルで安定化できる。
- カスタム対応
特注工具や試作品製作にも柔軟に対応できるため、ユーザー仕様に合わせた最適提案が可能。
ロウ付け超硬工具のデメリット
- 熱影響リスク
加熱工程により、超硬チップに熱応力が発生し、クラックが生じる可能性がある。
- ロウ材の経年劣化
長期使用や高温環境下で、ロウ材の強度低下・剥離リスクがある。
- 高負荷条件下での制約
重切削や極端な高速回転条件では、一体型超硬工具に性能で劣るケースがある。
- リペア対応制限
ロウ付け部分の摩耗・破損時には、再ロウ付けや補修が難しい場合がある。
ロウ付け工程の概要
- 接合面の清掃
- ロウ材の適正配置
- 加熱(適温制御)
- 毛細管現象による接合
- 徐冷(応力緩和)
- 仕上げと最終検査
精密な温度管理、清浄な接合面管理、適切なロウ材量設定が、ロウ付け品質の鍵となります。
他工法との比較
項目 |
ロウ付け超硬工具 |
インサート式工具 |
ソリッド超硬工具 |
コスト |
◎ 低コスト |
○ インサート交換式 |
△ 材料費高 |
高負荷加工耐性 |
△ 中負荷向き |
◎ 高負荷対応 |
◎ 高負荷・高剛性対応 |
再研磨・リペア |
△ 制約あり |
◎ インサート交換容易 |
△ 再研磨可能だがコスト高 |
特殊形状対応 |
◎ 得意 |
△ インサート形状制限あり |
○ 設計次第 |
まとめ
ロウ付け超硬工具は、コストを抑えながらも高い性能を発揮できる、非常に実用的な切削工具です。さまざまな加工現場で幅広く使用されており、用途に合った工具を正しく選び、適切に使うことで、生産性の向上に大きくつなげることができます。